社員旅行だ。
・・・うん、社員旅行だって。
うんざり。
社員旅行ってだけでもうんざりなのに。塩山辺りまでなら、ドリスJの現場や釣りで行っててなかなかの好印象だったんだけど、その先はね。
昔むかし誰かのローディーとして甲府のホールに行って不愉快なおもいをした記憶があって。だからこの辺りは陰気で嫌なやつらが住んでる感じ悪りー町、って印象がずっとあった。
ぼくは嫌な事は忘れちゃう都合のいい頭なもんだから、なんの仕事で行って、どんな不愉快な目にあったのかも既にすっぽり忘れてるんだけどさ。
えーと、甲府から石和にかけてはこじんまりとした普通の町でした。
観光地の観光旅行も大嫌いなので、特筆する事はなにもなかった。
とにかく退屈だった。
宿泊先のホテルの部屋からは金星と木星がよく見えたよ。
宵の明星の季節なんだね。
うちの職場は南西方向に他のビルがあるんで、全然気が付かないでいたよ。
でも、空はまだ秋の星座。
夜が深くなってくると、ぼくの嫌いなオリオン座が昇ってくるけどね。
温泉は二回入った。
お湯はまあまあ。
なかなか眠れないので久々にレイモンド・カーヴァーを読み返す。
皆が読書をしてる部屋があったのでそこにおじゃまして。
うん、やっぱりおもしろい。
何度読んでも、カセドラルはちょっとぞくぞくする。
いい時間になったので自分の部屋へ戻る。
皆寝てた。
一人、豚みたいなオッサンが居るんだけど、そいつの鼾がうるさい。
眠れなくて、本と煙草をもって読書のできるスペースを探す。
今どきのホテルのロビーは禁煙。
まあ、当然だ。
温泉の入り口に灰皿があったのを思い出す。
読書。
どこかから誰かが叫んでいる。
酔っ払いか。
もう3時半近いよ。
やれやれ。
とおもっていたら、温泉からおじさんが出てきてぼくを見つけて叫ぶ。
誰か呼んできてくれ。
人が死んでる。
おいおい、まじですか。
フロントへ。
もちろん誰もいない。
内線をつかってフロントを呼ぶ。
ほんとに死んでるのかどうかわからないので、人が倒れてるらしい、すぐに来てくれ、と言われたと伝える。
・・・。
とりあえず息はしていたようだ。
明け方4時過ぎ、救急車のサイレンが聞こえる。
そして未だにおっさんの鼾は止まらない。
ぼくは未だに眠れない。
やれやれ。
えーと、文体変えるのって面白いね。